kiringrafica

kiringrafica

2010/10/09

**-かもめ食堂/萩上直子

ひさしぶりの映画。2番目の景色の画面になって、「あ、映画が始まったんだ!」と背筋が伸びた。映画っていいね。
なんて無理のない映画!びっくり。
おいしい食べ物をおいしそうに食べているのを見るのは気持ちいいなあ。隣でハトさんの唾を飲み込む音が何度も聞こえてきておかしかった。私も明日の朝ごはんは何にしようかな、と考えながらみた(秋刀魚の開きと大根おろしになった)。
登場人物と出来事の配置が上手。役者さんたち、台詞、たのしかった。

2010/10/09

*–静かなる決闘/黒澤明

かもめ食堂の次に黒澤明を観る。
すごい。白黒二階調、グレーのない画面に、雨が、みぞれが降り、車のライトが光り、消えていく。光がちらちらして数時間たったことがわかる、なんて上手なんだろう。
物語はどうしても(ああこういう時代だったんだなぁ)と思いながら観ている。次の日ハトさんと話していて、「今の時代だと、自分がエイズと知ったら恋人と別れるか」と言われて、なるほどと思った。
ガスが出た!と真夜中に入院患者がハーモニカを吹いて騒ぐところ、その音楽の中でうなだれる二人がよかった。

2009/01/08

**-太陽/アレクサンドル・ソクーロフ

始まる前にハトは、ソクーロフの1時間は普通の映画の3時間だからね、と言った。なるほど薄暗く、ぼそぼそとした映画。役者がよかったな。天皇の発言の一番聞きたいところが聞き取れなかったり、意味がわからなかったりでもどかしい。
どこまで本当のことなんだろう。天皇はまっすぐで立派な人間だった。ここに描かれていることがすべてなら、戦争責任を問うべきだろうと思った。
空襲の爆撃機が大鳥のようにうねるところ、怖かった。本当にああいうふうに見えたのだろう。

2009/01/06

**-シルヴィア/クリスティン・ジェフズ

2004年の年末に公開された英米映画。重い色使いでも、最近の映画はやっぱりどこか違う、画面の端までちゃんと見えている感じがするし、みずみずしい。
これが、グウィネス・パルトロウかって思った。どんな服を着ていても、とってもおしゃれに見える。そうか、おしゃれってこういうことなんだ。
どうしてこの人は詩を書くんだろう、真っ暗い穴を覗き込んでいるようで、哀しいなと思う。

2009/01/01

***MONDAY/サブ

堤さんの踊りがみたくて借りてきた。劇場で2回、家で2回くらい観たのかな、今回もハトと大笑いする。細部まで覚えてしまっているので、フライングして笑ってしまうくらいだ。
エレベーターに白塗りの男たちが踊りながら入っていくところが一番好きだ。

2008/12/29

**-シベールの日曜日/

1962年、フランス。
おもしろかった。
映像がよかった、水面の波紋にくらくらしたり、画面の隅に人物が写りこんでいてどきっとしたり、最後は暗さが増して、どんどん怖くなっていった。

2008/10/31

—ポゼッション/アンジェイ・ ズラウスキー

ハトさんはこの数週間ポーランドに夢中。それでポーランド映画。
ドキュメンタリーのような、からっとした映像。青写真を焼くときの感覚をなんとなく思い出した。
途中からもう、こわくてこわくて見るのをやめて、お風呂に入る。湯船につかっていると、通りから「いしや~き、イモ!」の呼び声と、映画の叫び声とが交互に聞こえてきた。
お風呂からあがって、ハトの横に座ってまた見る。こわいものみたさ。

とにかく怖い映画だった。
恋人の死にショックを受けて 魂の抜けてしまった友人の身体が、担架で運ばれてくる夢を見た。

2008/10/26

—白い花びら/アキ・カウリスマキ

久しぶりにふや町映画タウン。ホームページが開けないので心配していたのだけれど、お店はいつもどおりでほっとする。

ハトさんが好きなアキ・カウリスマキ。20世紀最後のサイレント・フィルムなんだって。
ひどい話しだった。ひどい話しでもいいんだけれど、どこか「ふざけている」ように感じて、磨り減ってしまった。

2008/09/15

*–晩春/小津安二郎

久々の映画、こちらは原節子や杉村春子が初めて小津映画に参加した作品なんだって、それは観なきゃ!

毎回毎回似たような設定で、ハトと喜び合う。杉村春子、今一番好きな俳優です。
ときどき挿入される風景は、絵にならないところばかりだけど、どのように選んだのだろうか。

箸がころんでも~、なお年頃にしても、原節子は笑いすぎじゃないかな、と思った。
笑いながら自転車で砂浜を走っている場面は、白く飛んでいて、天国みたいだった。

いやいや、いいお話しでした。

2008/05/08

*–ハメット/ヴィム・ヴェンダース

1985年、アメリカ。
ヴィム・ヴェンダースだって、なつかしいな。映画が始まると、本当にあの、青く少しオレンジかかった画面だった。ちょっと調子の悪いときに見る、味のない夢のような世界。深くもぐることも、水面に顔をあげることもできなくて、暗渠を流れているよう。
冒頭の主人公の部屋から見おろした風景、子供たちが遊んでいるごちゃごちゃとした街角、そこにクリーニング屋の蒸気がぷしゅーっと出るところがよかった。わくわくした。
推理小説家が小説に巻き込まれていく。話はなんだか混沌としていて、でもテンポはよくて、やっぱり夢の世界だった。

2008/05/07

**-オリヴィエ オリヴィエ/アグニエシュカ・ホランド

1993年、フランス。もっと古い映画かと思った。

ある世界をつくりだすこと、絶望を描くこと、すごいことだな、と思う。
でも「作品、物語」として距離を置く前に、子供を取り巻く環境に胸が痛んだ。
子供に「私を許して」とみんなが言う。言えるのをうらやましいと思う。でも子供は、子供はどうなるのだろう。

光と影がはっきりしていて、その中で子供の目が光っていてとってもこわかった。

2008/03/08

***もののけ姫/宮崎駿

学生のころに母親と映画館に観に行って以来。
(母はその後、「おののき姫おもしろかった」という手紙をくれた)

すごいな、宮崎駿はどうしてほんとうのことを知っているんだろう。
いや、気づかないだけで、本当はみんな知っている、だってほんとうのことなんだもの。そのことを教えてくれる。表してくれる。
・・・すごいな。

ああ私、やらなければいけないことがある、強くそう思った。

2008/02/15

**-レザボア・ドッグス/クエンティン・タランティーノ

プロローグからキャストの幕が出てくるところがすっごくよかった。くっだらない会話を切り上げて、細いネクタイした黒服の男たちが、赤と青の車の前をゆっくり歩いていく、そして音楽!
ここで終わってもよいくらい、よかった。
タランティーノってすっごく映画好きなんだろうなって思う。内容は実にくだらない、まさにreservior dogs。
スティーヴ・ブシェーミが出ていた!役名はピンクですよ。いいなあ。
精神衛生上悪いとついこの間言ったばかりなのに、また暴力映画。途中指の間からおそるおそる見るところもあって、あなたの知らない世界もコタツ布団の隙間から見たなぁと思い出した。

2008/02/15

**-手をつなぐ子等/稲垣浩

1948年。笠智衆と杉村春子が出ている小学校の物語。
とってもよかった。ほのぼのとしていて、温かくて、そういうのがじんわりと染み込んでくる。気持ちよい人たちで、つい微笑んでしまう。
情景や心理の説明がガガガッと映像として入るところがなんだかおかしかった。
しかし召集令状って突然舞い込むものなんだね。この生活に召集令状がやってくるなんて考えたくもない。

笠智衆が楽太郎に見えて仕方がなかった。そしていじめっ子のヤマキンは大学の寮の後輩に見えた。

2008/02/08

**-死刑台のエレベーター/ルイ・マル

1957年、フランス。
トランペットのジャズが始まったとたんに、あ、これ観たことあるんだった、と思い出す。
ルイ・マルの作品を何本か観たけれど、これが一番好きだ。屋上から通りを見下ろした映像が気持ち悪いくらい平べったくてどきっとした。建築模型を見ているような場面がたくさんあった。
実は仕事人のジュリアン(モーリス・ロネ)が淡々としていてよかった。ほとんど表情が読み取れない人たち、雨の長い夜、徹夜明けの早朝、現像液に浸かった写真、、、見ている私の身体もすっかり冷えてしまった。暖かくして寝よう。

2008/02/07

**-クレールの膝/エリック・ロメール

1989年、フランス。
ひゃー、クレールの膝ってどういう意味かわかったとたん、身を引く。どひゃー。
もう婚約者にしか感じないんだ、とか言いながら、ジェロームはそのことしか考えていないじゃないか。教訓?いいえ、私はローラやクレールの恋愛の方がよっぽどいいです。第一男女の距離がとっても近くって、見ているこちらが逃げ出したくなる。ひゅー。
いや、本当は羨ましいのかもしれない。少女たちの甘酸っぱいかわいらしさ、美しい女たち、若者たちの中でほんの少し漂うジェロームの憂い、そして謎めいた話しにすっかり引き込まれてしまった。
北の薄い夏の光に溢れる画面は、白をたくさん使った点描画を見ているようだった。
ローラ(ベアトリス・ロマン)が助産婦の左古さんに似ていてとってもかわいらしかった。
最後にオーロラ(オーロラ・コルシュ)が湖に手を振る、手の振り方がとってもすてきだった。そして終わりが唐突で、よかった。

2008/02/04

*–自転車泥棒/ヴィットリオ・デ・シーカ

1950年、イタリア。
自転車泥棒という題にわくわくしていたら、昔見たことがあるハトが「せつないよ」と言い、そのとおりだった。子供がずっといるところがよかった。
白く飛んだ唐突な建物がたくさん出てきて、こんな絵を描きたいな、と思った。

2008/02/01

**-パルプ・フィクション/クエンティーン・タランティーノ

デデデデデデデデデデデデデデ・・・・ヒュー・・・・ンハッ・ンハッ・
出だしの音楽、よいね。
ストーリーにしろ、どこか湾曲した映像にしろ、細部まできっちーり作りこんでいるところが大好き。間抜けそうなブッチ(ブルース・ウィリス)、華奢で頭の弱そうなハニー・バニー(アマンダ・ブラマー)、そしてお気楽なビンセント(ジョン・トラボルタ)などなど、登場人物もそれぞれに面白かったな。毒といえば毒なんだけれど害がなくて気楽。
もちろん見終わった後に、ハトとツイストごっこして遊びました。

2008/01/31

**-椿三十郎/黒澤明

1962年。用心棒とほっとんど同じ流れ。
青臭く気忙しい9人の青年、だらりとした椿三十郎、びくびくしている黒幕、そしてのんびりとしたおかみさんなど、登場人物の間合いの違いが思白い。椿三十郎は「鞘に納まらないぎらぎらとした刀」とのことだったが、それほどぎらぎらとは感じなかった。
若い田中邦衛がうれしくて、出てくるたびに(!)と小さくときめく。
白黒の映画で見る、白椿と赤椿、静かで可憐だった。
最後の血しぶきがすごい。水風船だ。

2008/01/30

**-地下鉄のザジ/ルイ・マル

1960年、フランス。喫茶店なんかにポスターが貼ってあったり、なにかと有名な映画だけれど、観るのは初めて。
冒頭の、電車の先頭車両から見ている景色がよかった。線路が分かれたり集まったりして、そして大きな駅に近づいてきた、とわくわくする。
ザジがかわいいね。おばさん(カルラ・マルリエ)の整いすぎた顔立ちがバリッと現れるところ、追いかけっこしているところ、エッフェル塔の階段の場面がよかった。部屋へ通じる階段の両脇が鏡張りになっているところなど、細部に凝っているところも好き、だけど、
最後にどんどん壊れていくの、私は好きじゃないなあ。