田舎では師走になると、家々の軒先に新巻鮭が並びました。小学校に通う道、ジャンパーのポケットに手を入れてランドセルをカタカタいわせながら、ベランダの鮭を数えました。風の強い日、鮭は斜めになりながらくるくるしました。お正月をすぎると、一匹だけ残った鮭は尾っぽの方から少しずつ切られ、短くなっていきました。
岩手に一番郷愁を感じるのはこの季節、鮭の季節です。鮭の背中で黒くなった川が見たくてうずうずします。鮭がかえってくる、というのが私のロマンなんだと思います。
岩手の親戚たちが童仙房まで何匹も溯上させてくれました。家では新巻鮭の干してある下に銀河犬がいたせいか、鮭を食べると犬になった気持ちになります。ありがとう、わんわん!